19 2005(平成17)年3月に発生した福岡県西方沖地震では、のちの数回にわたる余震を含めて、西鉄の鉄道施設においては甚大な被害に至ることはありませんでしたが、一部の高架橋柱に重度のひび割れ⑥が確認されました。また、軌道や構造物に損傷がないかを確認する安全点検や、損傷を受けた構造物の応急復旧作業⑦のため、運転見合わせは長時間続き、多数の帰宅困難者が発生するなど、駅の構内や駅の周辺は混乱する状況となりました。 この地震によって「福岡は地震空白地帯」という神話はくずれ、福岡においても大規模な地震が発生するおそれのあることを認識することになりました。 ご利用のお客さまはもちろんですが、鉄道沿線に住む方々にも「安全・安心」に生活していただく必要があります。鉄道は、災害発生後においても、早期に運行を再開し、災害復旧・復興にかかわる人や物資の輸送手段の役割を担っています。 鉄道構造物は、明治時代から高度経済成長期に建設されたものが多く、建設当時の設計思想の違い、建設後の老朽化などの理由から、大規模地震に耐えることができなかったり、地震動の特徴によっては崩壊したりすることも想定されます。 そこで、西鉄天神大牟田線(以下、「同線」)の鉄道構造物を駅間で区切り、段階的に耐震補強していくことになりました。同線の延長は、全線で約100kmあるため、早急に全線を耐震補強することは、費用と施工期間からみて困難であることは明らかです。 福岡県西方沖地震の震源に近い警固断層⑧に着目すると、断層は同線の薬院〜大橋間の高架橋区間で交差もしくは近傍を並走しているとみられています。この区間は鉄道と交差する道路、列車本数ともに交通量が最大となる重要な区間となります。 このため、西日本鉄道株式会社は2005年7月、同線の耐震性を向上するため、「鉄道構造物の耐震対策検討委員会」を設置しました。 わたしたちは、この委員会のメンバーとして、耐震補強工事のスケジュール、検討の進め方、調査・設計方法などの提案を行い、耐震補強工事はスタートしました。⑧福岡県西方沖地震震源と警固断層の位置関係 (出典:政府 地震調査研究推進本部)⑥平尾〜高宮間AR12高架橋柱の損傷⑥高宮〜大橋間R44高架橋の余震による被害⑦平尾〜高宮間応急仮受け復旧工事地域の安全・安心に貢献鉄道耐震補強
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