創立50周年記念誌
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34 2022(令和4)年8月に西鉄天神大牟田線の雑餉隈〜下大利間の営業線が高架となりました。これまで活躍した鉄道橋の役目(古いものは約100年供用されました)は終わり、新設された高架橋が毎日の安全輸送を担う鉄道構造物として定期検査の対象となります。 高架橋を近接目視で検査するには、高所作業車を必要とします。一方、遠望目視による検査は、「コンクリートひび割れ」を定性的に判断できますが、定量的に判断することは難しく、損傷度合いの判定に課題がありました。 この課題を解決するため、デジタルカメラによる写真画像で人工知能AIが「コンクリートひび割れ」の幅・長さを診断するシステムを活用する検査方法を提案しました。 地上から10mまで伸びる専用ポールにデジタルカメラを取り付け③、リモート操作でコンクリート表面の写真を撮影します。撮影した写真画像を合成→ひび割れ検出④→ひび割れ形状CAD化→数量算出の流れで診断し、定量的把握が可能となりました。「人間」に代わって「AI」が作業の一部を行うことで、仮設工事と作業手間の削減、点検者の違いによる誤差解消、品質向上が期待できます。③ポールカメラによる撮影④ひび割れ検出写真 西鉄天神大牟田線の鉄道橋には、一級河川に架かる筑後川橋梁⑤・矢部川橋梁、二級河川では、多々良川橋梁⑥、宝満川橋梁など、橋長100mを超える長大橋があります。 特に多々良川橋梁は1923(大正12)年に造られて100年が経過し、土木学会選奨土木遺産に指定されています。 これら長大橋では、軌道上からの点検は可能ですが、下部工や支承部などを点検するには、河川特有の足場設置や作業の安全確保に課題がありました。 わたしたちは、2019年に点検用UAV(ドローン)を導入し、ドローンによる定期点検で鉄道構造物の健全性を確認しています。 このドローンの映像をリアルタイムで配信することもできます。2021年12月、西日本鉄道の施設管理部門の協力を得て、現場映像を配信する実証実験⑤⑥を行いました。災害に備え、いち早く現場の状況把握を行い、復旧対策の支援につなげるため、常に万全の体制を整えています。 これからも大きな課題となる建設業界の担い手不足の解消のため、従来の「人」による作業を代替するデジタル化の実装を進めていきたいと考えています。ただし、地域生活の安全を支えるインフラの維持管理には、高度な技術を備えた技術者の判断が最終的に求められることを忘れてはいません。⑤筑後川橋梁(上流より望む)⑥多々良川橋梁(UAV操作画面)AI による点検方法の導入UAV(ドローン)による橋梁点検

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